ケータイ恋愛小説家
美雨ちゃんは恥ずかしそうに微笑むとコクンと頷いた。


「ちょ……待って。じゃ、蓮君は? 美雨ちゃん、蓮君と付き合ってるんじゃなかったの?」


「蓮君? なんであたしと蓮君が?」


美雨ちゃんはキョトンとして……それからハッとしたような顔をした。


「日向、あたしと蓮君が付き合ってるって思ってたの? それ、誤解だよ!」



「だって……電話とかよくかかってきてたじゃん!」


「ああ……それは……」


何か言いかけた美雨ちゃんの言葉を遮って、幸樹さんが説明を始めた。



「蓮哉に紹介してもらったんだ、美雨のこと」


「えっ……」


「去年、美雨がミスキャンパスに選ばれて雑誌に載ってさ。オレ、それ見て一目ぼれしちまったの。そしたら、蓮哉が幼馴染だっつうからさ。紹介してくれって頼み込んだんだよ」


幸樹さんはその時のことでも思い出しているんだろうか、クスクス笑いながら話を続けた。


「最初は渋っててさ。『紹介とかめんどくせーのヤダ』……とか言ってたのにさ。ある日突然、美雨のアドレスわかったから……みたいに言ってきたんだ。あいつらしいよな。なんだかんだ言って、頼まれたら断れない性格なんだよな」


美雨ちゃんのアドレス……って、多分それはあたしから聞きだしたのだと思う。

あの時、あたしは蓮君に小説のアドバイスをしてもらう交換条件として、美雨ちゃんのアドレスを教えた。

そっか……。

あれは幸樹さんのためだったんだ。


「じゃ……」


あたしはまだ疑問に思っていたことをぶつける。


「美雨ちゃんと蓮君がCD屋さんから出てきたのは? 二人で相合傘してたよ?」

< 301 / 365 >

この作品をシェア

pagetop