『叶えたいこと』
 「大丈夫か?」

 しばらくして、武田君があたしの顔を心配そうに覗き込む。

 「…」

 あたしは、何も答えられない。こういうのを喪失感って言うのだろうか。

 「なぁ、君塚、さっきのあいつのこと、好きなのか」

 急に、空を見上げて武田君が照れくさそうに言う。

 「…?」

 質問の意図を測りかねて、あたしは首をかしげる。

 「あ、いや、なんていうか…あいつ、君塚にとって大切なやつなのかなって…」
 「…友達、だった。ようやく出来た、友達だったの」

 ようやくあたしは口を開けた。そう、あたしは友達を失ってしまったんだ。

 「あのさ、俺じゃ、だめか?」
 「え?」
 「友達…っつーか、俺、お前のことずっと前から好きなんだ」
 「えっ?」

 ちょっと頭が真っ白になる。
 武田君、今、なんて言った?

 「あ、いや…あの、わ、忘れてくれ、今のは」

 武田君はえらく慌てている。

 「で、でも…」

 あたしもそれくらいしか言えない。びっくりしすぎて、心臓がバクバクしている。
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