上手なフラれ方
除夜の鐘が、一度、鳴った。

重厚な音が、体中に響き渡る。


「なんですか? 話って」


北村麗華が柔らかな笑顔で僕を見ている。

また一度、心臓が大きく揺れた。

拳をギュッと握りしめる。





「僕も、北村先輩のことが好きです」





つぶやくように言った。

恥ずかしさで、顔を上げることができない。

意味もなく、地面をじっと見つめた。


「大野くん……」


北村麗華の声が聞こえた。

すぐ近くに、彼女がいる。

視界に、彼女の足が入る。

激しく、脈打つ。

ちらりと理沙の顔が頭に浮かぶ。


また、鐘が鳴った。

そのときだった。

パンという音がして顔を上げると、北村麗華が、顔の前で拝むように手を合わせていた。


「ごめん、定員オーバーだ」
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