秘密の片思い
乱暴にバスルームのドアを開けると母親にばったり出くわす。


「あら、郁斗 おはよう 早いのね?」


首にタオルをかけている背の高い息子を仰ぎ見る。


「はよ お袋、愛から聞かれても何も答えるなよ?」


「いきなりなんなの?」


「愛が何を忘れてしまったのか知りたがっているんだ 絶対に言わないでくれよ 父さんにも言っておいて」


郁斗はそう言うと一段抜かしで階段を上がって行った。


その後姿を見て溜息を吐いた母親だった。


* * * * * *


結局郁斗は愛を置いていけずに練習を休んだ。


愛が起きるのを待ってドライブに誘うつもりだ。


ドライブと食事をして記憶を取り戻すのは焦らないでほしいと説得するつもりだった。




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