ノンステップ・シュガー
♭ シュガーレス・キス
「新崎、なんで学校来ないの?」

久々に登校してきた新崎の隣に座って、足をプラプラさせながらそう聞いてみる。肘をついて窓の外を見ているこいつの横顔を見て、本当に久しぶりだなあとしみじみ思う。いつだったろうか、新崎を最後に見たのは。

「………言わなきゃなんないわけ…?」

新崎は窓を見やりながらボソッとそれだけ言うと、一瞬、私に一瞥したような目をくれた。新崎の低くてするどい声とその視線に動揺してしまった私は、「あ、いやっ別にいいんだけどさっ」と手を顔前で振ってにこやかに振る舞う。同時に、さっきまでのどに出かかっていたことをぜんぶ飲み込んだ。

「………」

新崎も私もそのまま黙り込んでしまい、ただ時だけが流れる。どうしよう。ずっと聞きたくて聞けなかった質問。今日は新崎がいるのに。だから聞きたいのに。そう願うのに、新崎のさっきの反応を見たらこの沈黙を突き破ることはできなくなってしまった。
もう休み時間もおわろうかといったときだった、新崎がそれを言ったのは。

「あんたの唇くれたら、教えてやんなくもないよ」
「………は?」


 
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