死言数
仕事中、明菜はコーヒーを飲む。そして、美保の席は明菜の左側だ。
左利きの明菜のコーヒーカップは、机の左側に置かれる事が多い。ここがポイントだ。美保は明菜のカップの動きを目で追う。そして、落胆する。
<まただ・・・。>
明菜はコーヒーを飲むのが下手なのだろう。カップの縁を伝い、コーヒーが底に流れていく。その状態のカップを机の上に置くと、必ず跡が残る。これがいけない。明菜の机に跡がつくならまだしも、カップが美保の席まではみ出して置かれ、そこに跡が残る。美保にはこれが許せなかった。
書類を使い、それとなくカップが入り込まないように等と工夫をしているが、いっこうに改善しない。
ただ、口に出して言うのもどうかと思い黙っていた。
< 45 / 106 >

この作品をシェア

pagetop