死言数
その客はフードを被っていた。その姿からは、男か女か知る事が出来ない。
裏通りにある小さな雑居ビルに、その客は入っていった。階段の手すりを掴むと、その手すりが油で汚れた。
エレベーターのないビルで四階まで昇ったので、その客は少し息が切れていた。入り口の前で一休みし、それからドアノブを握った。扉には小さくこう書いてあった。
“呪い屋”
その店の名にふさわしく、扉を開けるとギーギーと耳障りな音を立て開いた。
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