いちえ
自然と笑えた自分に、対して瑠衣斗が驚いたように目を見開いた。
素直な自分の気持ちを、ちゃんと伝えたかった。
瑠衣斗の見たことのないような表情を見て、気持ちを知り、今まで自分の事でいっぱいいっぱいだった事に対して申し訳なく思う。
そんなに前から、瑠衣斗はそんな事思ってたんだ………。
そんな事を思いながらも、私には普通に接してくれた瑠衣斗に、胸が締め付けられる。
「何か…ごめんね」
「いや、その…ももが謝る事ではないし……」
「ううん。違うの。きっと私、周りがちゃんと見えてなかったんだよ」
慶兄に対する自分の気持ちから、周りが見えなくなっていた。
罪悪感からか、瑠衣斗を意識しないようにしていたんだ。
結局、自分のただのエゴに、自己満足していただけ。
いや、自己満足すらできない程、私は自分を守る事だけに必死だっただけだ。
「るぅにそんな事言わせちゃって……友達…として最低だよ」
私のセリフに、何か言いたげに口を紡ぐ瑠衣斗に、胸が詰まる。
自分で言った事に、更に胸が苦しくなる。
「いろんなキッカケをくれたのはるぅだよ。泣き虫は余分だけどね」
「はは、俺のせいか。それは」
笑って言う瑠衣斗に、ホッと胸をなで下ろした。
ずっと瑠衣斗から聞かなかったら、きっと本当に距離ができていたんじゃないかと思ってしまう。
言いたい事も言えず、自分の中に溜め込みすぎると、いつしかそれは大きなストレスになってしまうと思う。
イコール、相手にストレスを感じてしまうようになる。
そうなる事で、悪循環してしまうんだ。
きっと、このままだったら会う機会も減っていっただろう。
それは、瑠衣斗がストレスを感じてしまうから。
私に会う事で、苦痛を感じてしまうから………。
「話してくれて、ありがとう」
言い辛い事、ちゃんと話してくれてありがとう……―――。