いちえ



「うっわぁ〜。すっごい綺麗」


サラサラと流れる水は、驚く程透き通っていて、中にある小ぶりな岩や藻が、水の流れを隔ててゆらゆらと見えている。


「家の近くにこんな綺麗な水が流れてるんだあ…」


「雪解け水だよ。だから冷たい」


「へえ〜。すごーい」


水路に沿うように、流れを追うように歩いた。


気が付くと、私から瑠衣斗の手を握り締める形になっていて、思わず力を抜いた。


興奮しすぎちゃった…。



恥ずかしくなり力を抜くと、先ほどよりも強く手を握り返された。


「……あとちょっと…」


「え?あとちょっと?」



まだ青々とした葉が、笹舟のように流されて行く。


夕焼けを受けてキラキラと紅く輝く水の流れは、何だか切なくさせる。


「2人で…いたいな〜…なんて」


フッと笑ってはにかむ瑠衣斗から、目が離せない。


電気が走るような感覚に、頭が真っ白になってただ見つめ返すしかできない。



そんな私に向かい、再び瑠衣斗が笑ってみせる。


「…あいつら、うるせえのなんの…」


「な…なんだ。そっか」



びっくりした!!私、何期待してるんだろ。


ふう、と瑠衣斗に分からないように溜め息をつくと、ふと視線を感じて瑠衣斗を見上げた。



バッチリ交わる視線に、ドキッとする。


「何?期待してたの?」


「なっ…なにを!!!!」


「ふはっ、余裕ね〜」


「はあぁ!?」




何だか無性に悔しくて悔しくて、でも何も言い返す事ができず、唯一の抵抗とでも言うように、グッと唇を結んだのだった。
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