いちえ



「我慢…してたんだ」


「我慢したけど、気付いたら寝てた」


「そうだったんだ」



いつも無防備に眠る、瑠衣斗の寝顔が脳裏に浮かぶ。


サラサラと流れる、少し長い前髪の間から、照れたような目を向ける瑠衣斗に胸がドキンと音をたてる。


吸い込まれてしまいそうな瞳に、何か引力を感じる。



「てか、そこ食いつくとこ!?」


龍雅はやっぱり楽しそうに、私に対して笑いながら言葉を続け、そんな中ヨネさんも楽しそうだ。


「女の子に興味ねえのは病気だろ!!」


「だから、興味ある奴だけ興味あればいいだろー」


「そーゆう問題じゃねーえ!!!」


「…どんな問題だよ……」



龍雅の異様なまでの女の子好きには慣れてしまったけれど、何となく瑠衣斗の言葉に切なくなってしまう。


余計に瑠衣斗の気持ちが分からない。

ただの気まぐれ…?それとも―――。



顔が熱くなるのが分かり、慌てて考えている事を強制終了させる。



そんなはずないよね。るぅには好きな人が居るんだもん。


そう思い出すだけで、浮かびかけていた気持ちは簡単に沈んでしまう。


やっぱり、分からない。


グルグルと同じ事ばかりを考えていても、答えなんて分からないんだから。



だからといって、この気持ちを言葉にはできない。


この関係を壊したくない。


ここは、唯一の私の場所だから。


「じゃ、ももちゃんは特別なのか?」


「はっ!?と、特別!?特別…特別…と言えば…特別」



いつの間にか俯いていた顔を、私はゆっくりと瑠衣斗に向けた。
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