いちえ



「嬉し泣き……あぁ…」



確かにそうだ。美春が綺麗すぎて、幸せそうで、お母さんのドレスが似合いすぎで嬉しかった。


「だからすげぇなって」


「…美春にはかなわないよ」



でも、素直に泣けたのはきっと………。


泣けるようになったのは……。


「まじで泣き虫だよな〜」



クスクス笑う瑠衣斗は、八重歯を覗かせ、目を細めて私に笑顔を向けている。


「…ホントにね」



本当に…るぅのせいだよ。







『え〜、ここで、美春と俊のご両親から一言〜!!ほれ、いつまでも抱き合ってんなよ』



いつの間にか、司会者からマイクを奪っていた龍雅が、そんな事を言い出した。


え?え?と戸惑う二人の両親が、照れながらも席を立った。


それを見計らって、両親の立ち上がった席へと駆け寄ると、グイッと俊ちゃんのお父さんにマイクを手渡した。



一瞬、隣のお母さんを見下ろして目を合わせたが、改まって美春と俊ちゃんに顔を向けた。



ゴホンと一度咳払いすると、口元にマイクをあてた。



そんな様子を、俊ちゃんと美春は軽く目を見開いたように、こちらも戸惑った様子で視線を向けている。


『え〜、美春ちゃん、俊。結婚おめでとう。…突然の事だから何を言ったらいいのか分からないが……。俊、しっかり美春ちゃんを守りなさい。高校生から付き合ってきた二人が…親になる事は想像がつかないが、二人で助け合って仲良くやっていくんだぞ。……か…母さん…』



そう言って、顔を真っ赤にさせた俊ちゃんのお父さんはマイクを持ってあたふたしている。


そんなお父さんに向かって、ニコニコ笑うと、主役は美春ちゃんなんだから、美春ちゃんのお父さんとお母さんにマイク渡して。あなたはオマケよ!!と逃げた。


そんな二人に、周りから笑いが漏れた。
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