いちえ




どっちともつかない言葉に、一瞬眉を潜める。


言いたい事は分かるんだけど…ええと……?



「うん、そうだな。2人きりの時は、もっとそーゆう事言って」



「そーゆう…事って言われても…言えない」



そんな事言われたら、逆に恥ずかしくて言えないよ。



私の言葉に不満そうに眉をしかめた瑠衣斗が、再びギュッと私を抱き締める。



「もっと聞きたい。ももが、俺の事が好きって分かるような事」



驚く私に、すぐ耳元で瑠衣斗が囁くように言う。



背筋がゾクッとして、体を固める。


耳元をくすぐる瑠衣斗の息遣いが、私をくすぐったくしていく。



「や…は、恥ずかしい」



「なんで。照れんなよ。照れる事ねえじゃんかよ」



「むーり〜!!」



「なんで」




こう言う所、瑠衣斗って天然だと思う。


私の思いは知ってか知らずか、そんな風に不服そうに言う瑠衣斗が、おかしくて堪らない。


真剣に言う姿に、随分と不釣り合いな言葉達。



こう言う時って、きっとじゃれ合うみたいに…笑って言ったりしないかなあ?



尚も表情を崩さずに、真剣に言う瑠衣斗は、本気のようだ。



「改めてそんな事言われると、言えないに決まってるでしょう?」



「…そう…か?」



「逆に私に言われたら、るぅだって絶対照れる。てゆーかむしろ嫌がるね」



私の言葉を考えるように目を伏せた瑠衣斗が、しばらく経つと頬を徐々に赤く染めていく。



ようやく理解したような様子に、私は瑠衣斗の腕の中で小さく笑うのだった。
< 503 / 525 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop