いちえ



自分のせいだと思っているんだろう。


確かに、こんな状況で自分のせいだと思わない人もそう居ないだろう。


でも、何だか違う気がする。



「るぅに、りなさんは…振られたって言ってた」


「…うん」



言いにくそうに言う瑠衣斗に、胸がグッとする。


私やみんなが知らない所で、瑠衣斗に別な関係がある事にショックを受けた。


あって当然。みんなにだって、誰だってある事。


そんなことにまで嫉妬する自分が、小さな人間に思えて嫌になる。



再び心が曇りだし、その痛みをやり過ごすためにも私は口を開く。


「私は確かに二人の事に関係はないし、どんな仲かも知らない。でも、でも…りなさんが私に当たったって事は、少なくとも私はるぅのそばに居る人間として認めてくれたって事でしょ」


「それは…そうだろうけど…」


「だからいいの。反対にそう思ってもらえるだけでも、見られてるって事で十分嬉しい」



何を言われたかは、言いたくなかった。


口に出せば、また現実味を増すだけだから。


だから、言いたくないし言われたくない。



モヤモヤする気持ちは晴れないけども、そう思う事で私は気持ちに押しつぶされずに済む。



「…何で我慢すんだよ」


「我慢?別に何も我慢なんてしてないよ」



私は我慢なんてしてない。

本当にそう思ってるからこそ、りなさんはあんた行動を起こしたんだ。


タイミングが良すぎたけども。



「頼ってくれよ。俺もだけど、俺らってそんな頼りねえのかよ」



瑠衣斗の言葉は、胸を刺すようだった。
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