良と遼〜同じ名前の彼氏〜
ひじき
泉森公園から遼平の家に続く道を、あたしはひたすら走った。


バスや電車ではなくて、遼平は歩いて家に向かっている気がしていたのだ。


アスファルトに積もった雪は、靴や車のタイヤや泥が混ざって茶色く染まっていた。


車の熱で溶けた雪は、あたしのスウェードのブーツをみるみる濡らしていく。


つま先の感覚はなくなり、足の先から寒さが込み上げてくる。


雪のなか、遼平は来るかも分からないあたしを待ち続けていた。


あの煙草の量。
遼平はいったいどれだけの時間あの冷たいベンチに座っていたんだろう。


布団に入ってもなかなか温まらないあの体は、いったいどれだけ冷え切っていたんだろう。


その時、あたしの視界に真っ白な人影が飛び込んできた。
< 56 / 75 >

この作品をシェア

pagetop