プライダル・リミット

疑心

〈2009‐10‐25 4:03:33
いよいよ明日はダチの司法試験の最終日だ。
オレはお前の努力を知ってる。だから心配すんな。精一杯やってこい。合格したら盛大に祝おうぜ! 
ただ、これだけは忘れないで欲しい。人生にチャンスは一度きりじゃない。たとえ自分が選んだ道の先が行き止まりでも、また戻って違う道を行けばいい。
焦んな! 縛られんな! 後悔すんな! 
世に生を得るは事を為すにあり。
頑張れよ! キョーダイ〉
「世に生を得るは事を為すにあり……」
 父がことあるごとに口にしていた言葉――。「まさか……!」マキオはかつて抱いた違和感と同じものを感じた。
 マキオは知っていた。それが坂本竜馬の言葉であることを。リュウが時々同人の言葉を口にしていたことも――。
『人間というのはいかなる場合でも、好きな道、得ての道を捨ててはいけないものだ』
『我が為す事は、我のみぞ知る』
 そしてブログでの言葉――。
〈世に生を得るは事を為すにあり〉   
 マキオは覚えていた。リュウの名前が同人にちなんで名付けられたことを――。
『お袋いわく、親父が坂本竜馬が好きでこの名前を付けたらしい』
 マキオは薄々感づいていた。しかし、それを口にすることはおろか、頭に思い浮かべることさえ怖かった。今まで築き上げたこの関係が壊れてしまいそうで――。
 かつて描いたもう一つのパズル“リュウのパズル”が次々とはめ込まれてゆく――。




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