小悪魔は愛を食べる
「小学校の頃って、リーダー格の女子が嫌いって言ったらクラス中がシカトモードに入るじゃん。それで、芽衣も私もシカトされてたわけ」
「え、ヒメもシカトされてたの!?」
「まぁね。だって私こんな性格だし、親もあーだし」
「あー?」
七恵が間抜けな表情であーと見上げたのが妙に可愛らしい。
目を細めて姫華が続ける。
「うちの親父、元々はヤクザだったんだったよね。しかも幹部」
「え、えぇ!?うそ!?」
「まじ。でも私が生まれた時にはもう堅気で今の会社興してたけど」
「そ、そうなんだ…」
「びっくりした?」
「う、うん」
「それでね、小学校はすぐそこの…って言ってもナナはわかんないか。えっと、つまり地元だったわけ」
「うん」
「小学生の噂話ってすごいよ。ここだけの話が一週間で地区中に広がってんの。そんな訳で、ヤクザの娘って噂があっという間に校内に広まっちゃって、誰も私と口きいてくれなくてさ…五年生くらいまで登校拒否やってたんだよね、私」
「し、信じらんない…」
本気で驚愕している七恵に、しかし姫華は別段気に留めるでもなくまるで大切な昔を懐かしむように優しく喉を震わせた。
「初めて芽衣とイチに会ったのが、その五年生の時。たまたま担任に呼ばれて学校に行ったら、生徒玄関ですっごい可愛い子がきょろきょろしてんの。私、別に人間不信とかじゃなかったから、話かけてみたんだ。そしたら、靴隠されたって言うからさ…」
「一緒に探したの?」