妹の恋人は姉の彼氏の従弟
私は暗闇の中
ベッドの脇にある窓を少し開けた

体を起こすと
暗い夜空を見上げた

星は見えない
都会は明るすぎて
星が数えるくらいしか見えない

廊下をはさんだ隣の部屋からは
ベッドのきしむ音が聞こえた

たぶん
いや、絶対
お姉ちゃんと廉人さんが
戯れているんだ

「おい」

何度目の『おい』だろうか
会ってから数時間なのに
『おい』という言葉は何十回と聞いた気がする

私は首を捻ると
大男の顔を見た

窓から差し込む明かりで
海堂彰吾の表情がよく見えた

従弟だけあって
廉人さんによく似ている

…というか
廉人さんから笑顔をとった顔が
海堂彰吾って感じかな?

小さな顔に
鼻筋がすっと通っている

鋭い眼球が
私の顔を捕えていた

「不眠症か?」

ふみ…っ
私は大きく深呼吸すると
窓を閉めた

「寒くて起こしてしまったなら
申し訳ない」

「寒くはない」

「なら、よかった」

「明日、試合に出る?」

「一応」

「スタメン?」

「たぶん」

「緊張している?」

「たぶん」

海堂彰吾との会話がぷっつりと
切れた

沈黙が続くなか
姉の声が聞こえる

「ごめん」

思わず私は謝ってしまった
姉の甘い声は
中学生が聞くべき声ではない
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