妹の恋人は姉の彼氏の従弟
準備室を出て
軽い足取りで階段を下りていると

見慣れない制服の女子が
体育館の前で
悲しげな瞳をして立っていた

階段の上から
か弱い女子を見つめていると

海堂が近づいて行った

海堂の口が動いている
話しかけているのだろう

女子は振り返り
海堂の顔を見るなり
嬉しそうな笑顔に変わった



え?

海堂の知り合い?


女子は海堂の腕に手を絡ませた
すごく親しげに
海堂の体に触れた

海堂はとくに嫌がりもせず
女子の手を振りほどこうともしなかった


海堂の表情も穏やかだった

私は階段を降り切ると
なにも言わずに
海堂の横を通り過ぎていく

「彰吾、一緒に来てくれるでしょ?」

女子の言葉が私の耳に入ってきた

「一人じゃ怖いの
赤ちゃんが……」

「わかった」

海堂が承諾した

赤ちゃん?
一緒に行く?

どこに…
産婦人科?

私は体育館の中に入っていく

海堂は私が横を通り過ぎたのを
知っているのに

声もかけず
か弱そうな女子と話を続けていた

二人の会話が気になった

気になって
私は部活どころじゃなかった
< 97 / 133 >

この作品をシェア

pagetop