青春ing
 好きだと分かったら、今まで胸の中にあった苛々が、スッと消えていくのを感じる。あぁ、やっぱりそうだったんだ。妙に満たされたような感覚を覚えて、隣に居る派手な女を見つめてみる。



「健ちゃん、どうかした?」

「いや……良かったよ、お前に怪我がなくて。」

「うん!健ちゃんのおかげで、ウチは全然……って、健ちゃん!腕どうしたの!?」

「……え?」



 琥珀の言葉で自分の両腕に目をやると、まくり上げたシャツから覗く左腕が、少し赤くなっている。それに気付いたら、急に痛みが襲ってきた。

 さっき揉み合いになった時、強く掴まれでもしたのだろうか。大怪我でもないし、大したことはないから、生活に影響するほどでもない。「心配するな」と伝えたのだが、琥珀はとても申し訳なさそうな顔で、何度も「ごめんね」と繰り返す。もういいと口にするまで、彼女は謝罪をやめなかった。



「ほら、教室に戻るぞ。まだ授業は残ってるんだからな。」

「うん……」



 返事をしたのに、その場から動かない金髪頭。見かねてその手を引けば、驚いたような顔をして、渋々といった感じでついてきた。

 ――秋霖が止めば、冷たい風が、新たな季節を連れてくる。心の中に生まれた思いは、冬を越せるだろうか。そんなことを思いながら、オレは琥珀の手を引いて、校舎に戻るのだった。
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