落日


お互いが手を振り合うのと同時に、聡は私に背を向けて、理恵子たちがいる場所とは逆の方向に歩いて行った。


「だれー? いまの!」


駆け寄ってきた香織が、聡の後ろ姿を目ざとく見つけて訊いてくる。


「階段を上る途中で会った人。私たちと同じT市から来たんだって」

「えぇー! すごい、こんな偶然って」


香織は私と同じようにひどく驚いていた。


いろんな国からの観光客の中に紛れて、遠くに見える聡の姿。

彼は、クーポラの頂上から見下ろすフィレンツェの町並みをカメラに収めている。


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