落日
カフェまで走りながら、自分の気持ちに改めて気づかされる。
私は、誠司よりも聡を必要としているのだ、と。
聡がどんな人なのか、私はまだ知らない。これから先、どうなっていくのかも。
でも、先のことよりも、今の自分の気持ちに正直でいたい。
誠司が出張から帰ってきたら、自分の気持ちを正直に話そう。
どれだけ責められようと、覚悟はできている。
香織が言ったように、この気持ちを抱えたまま、誠司と未来を共にすることなんて考えられない。
カフェに着くと、聡が店の前で待っていた。
駆け寄ってくる私を見て、聡の顔に笑みが広がる。
それは、今日、仕事中に見た涼しげな凛とした表情ではなく、ドゥオーモで見た、あの爽やかな笑顔だった。