淡恋
「すまん、大丈夫か?」
「あ・・・大丈夫です。」

ぶつかった人は、あたしの手を強引に引っ張り上げ、立たせてくれた。
その人の顔を見ると・・・、いかにも不良って感じの人で、ちょっと怖かった。

「・・・お前、もしかして優奈か?」
「・・へ?なんであたしの名前・・・・。」
「俺、裕樹。」

・・裕樹?どっかで聞いた名前・・・・

「・・・・・あっ!合コン・・・?」
「そうそう!!遅れちまったの俺。」
「・・・合コンまだやってるんで、早く行って下さい。」
「じゃなくて!俺の事覚えてない・・?」
「え・・・?」

会ったのは初めてだよね・・・?

「・・・・わかりません。」
「・・・そぅ。」

そう言って、裕樹くんは行ってしまった。
一体なんなんだったんだろぅ・・・?

でも、そんな事はすぐに忘れて、あたしは急いで家に帰った。

「ただいまぁ。」

・・・・返事はない。
そりゃそうか。

あたしの親は小さい頃にあたしを捨てた。
養護施設で育てられたあたしは、高校生になってからずっと一人ぐらしだった。

でも、なぜかあまり養護施設での記憶がなかった。
なんでかな・・・。忘れたい事でもあったのかもしれない。

・・・でも、さびしくなんかない。
だって、親に育てられた記憶がないから。親の愛情なんて受けた事ないから。

《ピロピロピロピロ・・・》

メールの着信音が部屋に響く。
それは千夏からだった。

内容は・・・「今日は無理矢理連れてきちゃって本当にごめん(´;ω;`)!!許してなぁ=・・・。」だった。

「OKしたのはあたしだから、千夏は悪くなぃよ\(^o^)/☆また学校で会おぅ☆*:.」

あたしはそう返信した。
本当に千夏は悪くない。
全てはあたしのせいだもん・・・・。


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