うさぴょん号発進せよ
「…ごめんなさい」

男はその声に、ハッと顔を上げた。

「こんなこと、あなたにしか頼めなくて」

目の前にある小さなテーブルを隔てた先には、女の俯いた顔が見える。

「私からもお願いしたい。どうか、妻の頼みを…」

その隣に座っていた男も、深々と頭を下げてきた。

「アキナ、それにハルヒトさんも。頭を上げてくれ」

その様子に困惑した男は、薄く無精髭の生えた頬をぽりぽりと掻いた。

「俺の娘のことでは…アキナ、あんたにはすごく世話になった。
あの時にあんなに親身になってくれて…、今ではその娘もすっかり元気だ」

男は手を膝の上に下ろすと、女性を真っ直ぐに見詰めた。

「だからできる限り、俺もあんた達に協力しよう」



(そうだ。あの時に俺は…)



徐々に記憶が蘇ってくるようだった。
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