うさぴょん号発進せよ
(霧?…靄?)

だが、宇宙空間でそのようなものが発生するなど聞いたことはないし、ありえない。

現に、窓の外を通り過ぎている無数の浮遊物のようなものが、はっきりと見えているのだ。

トヲルが近くに寄り、目を凝らしてそれらのモノを観察してみると、何かの機体の破片のようなものや、大きな岩石、小石のような塊が見える。それらが船体に当たるのか、船の軋む音と共に、時折振動もしているようだ。

この辺りは、スペースデブリやメテオロイドの溜まり場なのだろうか。大きな惑星や、それが半分程に倒壊したようなものまでが、目の前を通り過ぎていく。

「う…」

呻き声のした方向を見ると、コウヅキが頭を押さえ、床から起き上がるところだった。

ついでに辺りも見回してみると、セリシアもマシンの下で倒れているのが見える。

エミリーも壁に凭れるようにして座り、動かない。だが船長だけは、しっかりと抱きかかえられていた。そしてその船長もまた気を失っているのか、動いていない様子だった。

「せ、船長?」

動かない船長に、恐る恐る声を掛けてみる。
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