うさぴょん号発進せよ

第3節 闇で蠢くモノ

トヲル達が入ってきた扉の、この部屋を挟んだ反対側、真向かいにある別の部屋へと続く扉が、いつの間にか開いていた。

奥は闇が広がっているようだ。しかしその闇が、僅かに揺れているようにも見える。

トヲルは自分の目が錯覚を起こしているのかとも思ったのだが、そうではない。目を凝らしてよく見ると、その奥で何かが蠢いているようだ。

徐々に形を成すと同時に、それらがこの部屋に入り込んできた。そのモノを捉えた瞬間、トヲルは咄嗟に口を手で押さえる。

トヲルがソレを捉える前に、コウヅキはミレイユを一気に抱き寄せた。

そこには『ヒト』がいた。





正確には『かつてヒトであったモノ』だ。





白目を剥き、首や腕、足などが、明らかにあり得ない方向に曲がっている。

中には、胴体が前を向いているのに頭は180度後ろを向いている者や、元は白衣らしき服が破れ皮膚も裂け、内蔵や骨が飛び出ている者、身体全体が捻れている者までいた。

異臭はそこで蠢いている、十数体の集団の中から放たれているようだった。

ねっとりと絡みついた、濃い鉄のような臭い―。

今ならその正体が分かる。
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