うさぴょん号発進せよ

第3節 コウヅキの過去

トヲルは独りで、とあるマンションの一室の前に立っていた。

一面を煉瓦で敷き詰められた、かなり大きくて綺麗な建物である。

一体、家賃はいくらなのだろうか。外観から見ても、随分と高額な感じがする。

トヲルは、その8階のフロアにいた。これからこの家を、訪問しなくてはならない。

時刻を見ると、3時を少し回ったばかりである。

時折遠くの方で、子供達の笑い声がする。

このマンションの入口付近には、ちょっとした憩いの公園のような庭園があった。遊具類などもいくつか設置されており、来る途中で小さい子供達が数人ほど、そこで遊んでいるのを見かけた。声はそこから聞こえてくるのだろう。

その歓声とは裏腹に、トヲルはかなり気が重かった。

(そもそもこんなところに住んでるヒトが、借金なんてするのかな?)

ヒトは見かけによらないことくらい、分かってはいたが。
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