恋 時 計 ~彼はおまわりさん~



「お母さん……?」



今まで聞いたことのない弱々しいお母さんの声。

けど、その声は確かにお母さんだった。



「お母さん、どうしたの?」



電話からは、返事のかわりに堪え切れない嗚咽だけが聞こえてくる。



「お母さん!? 何かあったの!?」



訳が分からないのに、不安と恐怖だけが湧き上がってくる。



速まる鼓動と共に、

体中の温度が冷めていくのを自分でも感じた。





『お父さん……お父さんが……
死んでしまうかもしれない……』








お父さん……が……?







お母さんの言葉が私の中に突き刺さり

目の前が真っ暗になった――。








死んでしまうかもしれない……







恐怖のあまり、私は床に膝を落とした。








お父さんが……














< 389 / 712 >

この作品をシェア

pagetop