【SR】メッセージ―今は遠き夏―

ところどころ壁のはげ落ちた、古い雑居ビルの前で繁人は足を止めた。


「おお!まだあるみたいだぞ。

見ろよ、汚いけど『ミスティック』って外看板、現役みたいだもんな」


廃墟にはなっていないらしい。

地下へ通じる階段には掃除した跡が見られ、降り口には、ところどころ葉の枯れた観葉植物の鉢が置かれていた。

雑草も綺麗に引き抜かれ、このビルに今も人の手が入っていることを物語っている。


「でもこの時間じゃなあ……。さすがにママもいないよ。携帯の番号も知らないし、困ったな。

仕方ない、飯でも食って出直してくるか」


時計の針は午後一時を回ったところだ。

あと数時間は誰も来ないだろう。


コクリと頷いた百夏に、申し訳なさそうな顔で繁人が尋ねた。


「……なあ。この辺りとか看板見て、なんかヒントになったか?」

< 31 / 56 >

この作品をシェア

pagetop