【SR】メッセージ―今は遠き夏―

自分は、たまたま生まれてきてしまっただけの、大勢の中の一人。

存在していることに、さほど意味などない。

ずっと、そう思って生きていた。


物心ついた時には既に母子家庭の環境で、甘えるという言葉も知らずに。

困ったことは、自分で解決してゆくしかないのだと、いつしか身についていた。


友達、そして恋人も。

寄り添っている時は楽しくて、でもいつかみんな、離れていってしまう。

誰かが隣にいる幸せを知った後の孤独は、さらに辛く感じた。


だったら、いっそ最初から一人でいるほうがいい――。


気がつけば、大好きだった母さえも、自分のそばからいなくなってしまった。

……ほらね、やっぱりあたしは一人なんだ。

自分は、世の中をたった一人で生きてゆくことを、生まれながらに宣告されたのだ。

いつしか、孤独である事も当たり前に受け止められるようになっていた。

< 51 / 56 >

この作品をシェア

pagetop