【SR】メッセージ―今は遠き夏―

……新手のナンパか、と百夏は思った。

それとも、話題に興味を惹きつけて、乗り出してきたところで夜の世界へスカウトか。

――いずれにしてもバカバカしい。

途端に、百夏の気持ちはしぼんでゆく。


交差点の向こうで、目的のバスが信号待ちをしているのが見え、腕時計に目を落とした。

20分遅れだなんて……ホント、あり得ない。

ため息をつきながら、でも助かったと思った。


この男、なかなかしつこいのだ。

無視しても振り切れる自信がなかった百夏は、このままバスに乗ってしまおうと決めた。


「バスが来たから」

「え?ちょ……ちょっと待てよ!

モモカは相変わらず一方的だなあ。

あの時だって、勘違いだって何度も言ってるのに、結局聞いてくれなかったし。

俺は本当に好きだったし、結婚しようって言葉にも嘘はなかったんだから。

あの後も、モモカのことなかなか忘れられなかったけど、頑張って立ち直ったんだぜ」

< 9 / 56 >

この作品をシェア

pagetop