今宵、月の照らす街で
長刀が剣一郎を捉える瞬間、アルファを雷が襲った。


「これは…」


アルファは、右腕の無い男に紅い眼をやる。


「ば…馬鹿剣一郎…何諦めてる…」


直仁の術が、もう一度アルファを襲う。


「おっとっと」


アルファはバック宙しながら回避した。


「直仁…!無理しないで!」


紘子の必死な制止に構わず、直仁は身を乗り出す。


「蛍の炎は………そんな淡くないでしょ」


息も絶え絶えの状態で呟く直仁の言葉に、剣一郎は眼を見開く。


そして直仁は崩れ、紘子にもたれかかった。


「お友達、大丈夫?」


アルファの言葉に、剣一郎の真紅の波動が応える。


「目が…醒めた…」


真紅の波動は剣一郎の言葉に反応して、色を変える。


「諦めちまった…まだ貴様との闘いが始まったばかりなのに…」


真紅の波動は雄々しく燃え上がり、濃い紅…紅蓮の波動に変わる。


「綺麗だ…」


アルファが剣一郎の波動に見とれる。


それは余裕の表れなのかは解らないが、剣一郎はそれを気にせずに刀を構えた。
< 169 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop