今宵、月の照らす街で
今日はいつもよりも疲れが溜まる一日だった。


隣の転入生に校内を案内したり、日本を教えたり。


幸運にも、彼女の理解能力はかなり優れており、説明に困る事は全く無かった。


「セージ、陰陽師っていたの?」


―――またおかしい事を…


先程から聞いていれば、俗に言う“オカルト”に興味がある様だ。


「あぁ、いたらしいな。京にはゆかりの地がある」


自らの存在を隠すための模範解答を言うと、ふーん、と呟く。


「じゃあ今は?」


「いないんじゃないか?俺にはわからん」


これもまた、模範解答。


どうも好奇心旺盛な様で。


「ふぅん…」


癖なのか人差し指を唇に当てる。


「なぁに?」


「え、いや…」


ずっと見られたら、そりゃそう言うだろう。


ごまかそうと考えを巡らせたら、急にケータイが震えた。


悪い、と断って電話に出ると、受話器から多香子の声がした。
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