今宵、月の照らす街で
次女・紘子[コウコ]は姉と同じ国立帝東大学文科一類で英文学を専攻する2年生。


そんな紘子はミスキャンパスに選ばれてから芸能界入りし、色々活躍している。167センチと、姉妹揃っての長身で、姉同様スタイルもいい。そしてウェーブのかかったロングヘアの姉とは違い、肩すれすれのウェーブ。


赤みがかった髪色は3人揃って変わりはない。


「はい、あたしも」


ニコッと微笑んで渡すのし袋には、多香子とは違って筆ではなく水性ペンで『おとしだま』とだけ書いてあった。


「ありがと…こー姉らしいね」


紘子は髪を後ろにかき上げながら笑う。


「あら、適当って?」


端から見れば、怒っていると思わせるクールな笑み。


だが、何年もそれを見て来た弟には、からかいを含んだ笑みだとわかった。


「嘘よ、あたし筆使いが下手なのは知ってるでしょ?」


「いや、嬉しいよ。ありがとう」


姉との会話はいつも温かい気持ちになるけれど…姉の様な笑みを浮かべる事が出来ない。



姉を含め、人には話したことが無いが、そんな事を考える自分に嫌気がさしているのも事実だった。
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