記憶鮮明
記憶鮮明
僕は呟いた。

この静寂な空間の狭間で、この豊かな緑の大地で、呟いたのだ。


それは遡ること何憶年も前の僕の記憶。

僕の御霊はこの世に一つしかない。

魂は記憶を記録していきながら、綺麗に洗われ空っぽになるのだ。

何度も繰り返し使われてきた僕の魂が見た景色や人の記憶は、何故洗われるのだろう。


何故、大切な人を忘れてしまうのだろう。


だから、僕は死が怖い。


死ぬことに対しての恐怖は皆無に等しい。


だけども、僕が最も恐れていることは、この素晴らしき人生の記憶を失うことである。
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