涙の終りに ~my first love~
子供へのプレゼントに比べひと回り小さな指輪の方を見つめると、
これを買った時のあの幸せな気持ちが
津波のように全身に襲い掛かり、胸が痛くて痛くて苦しかった。

勝史やヒロが前に居ると必死に堪えても熱い涙が頬をつたい、たまらずに両手で頭を抱えながら俯いていた。

「ユウジ黙ってないで答えろよ!」と

怒る勝史に、後部席のオレの様子を知ったヒロはそっと何か耳打ちをしていた。

しばらく無言のまま車が走った後、
「港に・・・ 西港に行ってくれ・・・」とオレは顔を上げて搾り出すように言うと、
ルームーミラーには涙に滲んでぼやけたバカな自分が映っていた。

オレが指定した港、
そこは三年振りの再会をした時に朝まで語り明かしたあの場所だった。

ヒロはオレの涙声を聞いた後、気を使ってアルパインのボリュームを上げていた。

真子を捜したりしなければよかった・・・ 
再会しなければこんな悲しい思いをする事もなかった・・・。

美しい過去の思い出は、思い出のままにしておくべきだった。

勝史の言うようにいつも最後に傷つくのはオレ・・・ 

いや今回は真子も泣いていた。

今回は彼女の方が被害者かも知れないな・・・ 

だってオレが逢いたいと捜したりしていなければ真子に嘘を付かせる事もなかった・・・。

思えばオレと真子って絶対に結ばれない二人だったのかもしれない。
絶対に結ばれない二人だからこそ、
心を許し合えた僅かな瞬間が美しく光り輝くいていたのか?・・・

それってまるで流れ星だなと思った。

車はやがて雨上がりの夜空を映し出す港に着くと、
勝史は不機嫌そうにタバコに火をつけ、
ヒロは遠くを行く貨物船を見ながら音楽に合わせて指でリズムを取っていた。
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