涙の終りに ~my first love~
ミスターセンチメンタルロンリーボーイ
次の日から心の中にモヤモヤを抱えながらも真子との交際は続いた。

その程度の事でオレ方から別れを切り出すなんてあり得ないし、
学校の帰りに待ち合わせをしてお茶をしたり、休日にどこかに出かけたりすると
やはり真子には胸に閊えているものを忘れさせる美しさがあり切なかった。

心の底から人を愛してしまうと、その人の前では誰もがこんなに弱くなってしまうものなのか?  目に見える物でもなく、もちろん手にする事も出来ない
「愛」はそんなに偉大で力強いもの。
そう思うしかない。

「頼りなく力強く、情けなくも愛しい」それが真子との愛の日々だ。

そしてその愛の日々に終止符を打つ時がやってきた。
その日は年が明けたばかりの1月3日だった。

オレって男は本当に女々しい男だ。
真子も最後の日の出来事は覚えていたけど、日付までは覚えておらず、
それを忘れずに覚えている自分が悲しかった。

その日オレ達は街に出て映画を見る約束をしていた。
映画のタイトルは忘れてしまったけど、外国のロックバンドのドキュメンタリーみたいなやつで高校の先生が「青春して来い!」と意味不明な言葉を言いながら招待券を2枚、
オレにくれたものだった。

だからそんな映画よりも、はっきり言って新年を迎えて一発目のデートという方がメインで、オレはかなりリキんでいた。
部屋でブラックキャッツのナンバーをボリュームいっぱいに鳴らし、
いつもより多めのグリースで髪を撫でつけ、買ったばかりのラバーソウルを磨きながら、
待ち合わせ時間のかなり前から”スタンバイOK!”の状態だった。

何度も鏡を見ながらリーゼントの乱れをチェックしていると、張り切り過ぎているせいか
咽喉の渇きを感じ、本家に冷たい物でも飲みに入った。
そして台所のまでやってくると突然電話が鳴った。

オレはこの瞬間、
「電話の相手は真子!そして今日のデートはキャンセル!」と直感した。
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