涙の終りに ~my first love~
バイバイサンキューガール
妙な静けさを感じなんとなくマミの方を見ると、
どんな時も騒がしいはずのマミが急に大人しくなっており、
今まで二人で居て味わった事のない違和感を感じたオレは、
はじめて女性と二人でいる事を意識した。
オレは顔を動かさずに視線だけマミの方にやると、瞬きもせず一点を見つめたままの
マミは思いつめたように何かを語ろうとしているところだった。

この瞬間オレはマミに”告られる!”と直感した。

それはオレの降りる停留所が次にせまった頃だった。
数秒前にはじめてマミを女性として意識したばかりなのに、いま告られても心の準備が出来ていないと思ったオレは、映画の事やヒロが最近太った事などを勝手に
しゃべりまくりマミに話す隙を与えないようにした。

そしてもうすぐバス停だというところまでマシンガンのようにしゃべりまくったその時、
マミの唇がかすかに

「ユウジ・・・」
と動いた。

「じゃまたな! 気をつけて帰れよ」と
聞こえないふりをしたオレはそのまま振り切るように降り口に向かい、
運転手に定期券を見せると、勢い良く開いた自動ドアに向かって逃げ込むようにバスを降りた。

後ろ髪を引かれる思いでマミを乗せたバスを振り返ると、心通わぬ重い鉄のかたまりは
ゆっくりと走り出しオレは最後部のマミの姿を探した。

加速してゆくバスの窓には、瞳を涙でいっぱいにしたマミが無理に笑顔になろうとしながらこちらに向かって手を振っていた。
その顔を見たオレは思わず「マミ!」と大きな声で叫び、
走り去ろうとするバスに向かって無意識に身体が動き出していた。

いつも陽気なマミ、男勝りのマミ、そして親友のようなマミが一人の女性となって涙を浮かべている。

オレはどうすればいいのか分からず、ただひたすら手を振った。
マミの姿が小さくなり見えなくなるまでいつまでも手を振り続けた。
そしてバスが完全に見えなくなってもその場に立ち尽くし、
マミの瞳の涙を思い出しながら「悪い事したな」と後悔していた。

軽い気持ちで誘った映画だけど、マミの心の中にはオレに対する小さな恋心があったなんて。

その恋心を男友達といる安心感と勘違いしていたオレはなんて無様で鈍感な男だろう。

同時にオレには女をダマすなんて無理だと思った。
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