涙の終りに ~my first love~
馳せる想い
下心のような感覚で本音の部分を言われた事で急に居心地の悪くなったオレは、

「まっ そんなトコかな」と進一に背を向け歩き出すと、
「ユウジ! 式が終わったらメシ喰いに行こうぜ!」と振り返れば木刀片手の進一が大きな声で叫んでいた。

「木刀を振り回してるような奴とメシなんか喰えるか!」と

心の中で思いながらも
「分かった! そしたらまた後でな!」とオレは進一に手を振った。

勝史達は足早に会場入りをしていたがオレは直ぐに会場には入らず、進一とは違う意味で人捜しを始めた。
赤や青、色とりどりの振袖で着飾った女達は皆美しく華やかだった。
その中に中学の同級生やマミの姿も確認出来たが、真子の姿はなかった。
この辺りには居ないなと思ったオレは、会場から入場門と額に汗を輝かせながら何度も往復して彼女の姿を捜し回ったが、馳せる思いとは裏腹に真子の姿だけは何処にもなかった。
やがて式典が始まる時間となり
”新成人の皆さんは会場に入るように”
とアナウンスが流れ、人の流れが一気に会場入り口に押し寄せてくると、
オレは邪魔になるのを承知で入り口付近に立ち塞がり彼女の姿を捜した。

激しい波のように押し寄せて来る人の流れに靴を踏まれながら、
オレは必死になって真子の姿を捜した。

そして会場入りする人の波が途切れると、もう一度入場門まで走って行き彼女を捜したが
やはり真子の姿は何処にもなく、最後のタクシーらしき中から小走りで会場に向かおうとする振袖姿の女達と、虚しくオレは会場の中に入った。

もうこの時には仁王立ちをしていた進一の姿もなく、
すでに会場入りしている様子だった。

新成人で埋め尽くされた会場を何度も見渡しながら、
座席を確保してくれている勝史の横に座ると
「ユウジ、真子を捜してたんだろ?」と
アイツはじっとステージを見つめたまま語りかけてきた。

まだ呼吸の荒いオレも同じようにステージを見つめたまま
「その通りだけどアイツはいないな」と呟いた。

勝史はオレの方に首を傾けながら
「そんな事だろうと思ってオレもさっきから捜してるけど、この会場にはいないぞ」
と同情するように話してくれた。
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