涙の終りに ~my first love~
指輪
真子ともう一度やり直してみる。
オレ達は出会った頃と違ってもう二十歳すぎの立派な大人だ。
だから学生の時のような交際ではなくて、二人の将来もしっかり視野に入れてやり直したい。

その為にはどうすればいいのか?

オレは退屈な仕事中に、作業をしながら頭の中でいつもそんな事を考えていた。
今まで何度も別れては復活の繰り返しをした二人。
そんな繰り返しをした過去と同じような再スタートはしたくない。
オレは一人で散々悩んだ挙げ句、
もう一度やり直そうという言葉と一緒に指輪を贈ろう決めた。
婚約指輪みたいな大袈裟な物でないにしろカタチに残るモノとして指輪を贈る。
そしてその指輪を渡す時に”今までのような付き合いではなく、
これからの先の事もしっかり考えてやり直そう”と言う事に決めた。

そうなるとせっかちなオレは直ぐに行動せずにはいられず、
仕事を終えるとそのまま指輪を買いに行った。

しかし簡単に指輪を買うと言っても大変だった。

そんなモノ買う事じたい生まれて初めての経験である。
当然指輪にも流行りってもんがあるだろう・・・
張り切って指輪を買って、手渡した時に「昭和レトロだね・・・」なんて思われたくない。
だからその辺をちゃんと考えオバサン仕様じゃなくて若者向けを買わなければ・・・
だけどその若者向けってどこに行けば買えるのだろう・・・
指輪はどこで買うのがベストかなんて、相談出来る奴もいないしな・・・

必死で色々と考えた結果、取り合えず地元でも高級店の部類に入るデパートへ車を走らせた。
給料を貰ったばかりだからある程度金はある、
だけど指輪っていったい幾らぐらいなものなのか?・・・ 

なんて不安になりながら駐車場に車を止めエレベーターに乗った。

そしてお目当ての宝石店の前までやってくると、
入る前からその高級感に圧倒されてしまい、一度表に出て気合を入れ直してから店内に足を踏み入れた。

「さすが宝石店だ・・・ ヒロの店とは違うな・・・」

なんて思いながら値札を眺め下の桁から
「一・・・ 十・・・ 百・・・ 千・・・ 万・・・」と数えると値段もヒロの店とは大違いだった。

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