赤りんご





「始業式遅れるぞ〜!」



その言葉で我に返った。




「亮太!」



10日ぶりに会う亮太の笑顔を見ると、急に嬉しくなった。




「何ぼーっとしてんだ?」



「何でもない!亮太まだ来ないのかなーと思って」



気付かれないように紙を丸めてごみ箱へ捨てた。




気にしちゃダメだ。


深く考えることじゃない。


きっと、誰かのいたずら…



亮太がいたら私は平気。


何も怖くないもん…!




「みんな体育館行ったのか…」



いつの間にか廊下も静まり返っていて、亮太が来るまでに意外に時間が経っていたことに気付いた。



「うん、多分もう始まってると思うよ」



「面倒くせえな、サボろっか!」



「言うと思った!」



二人で顔を合わせて笑った。




亮太のサボり癖は直らない。




隣同士の席に座って、手を繋いだ。



「朝から教室に誰もいないなんて何か不思議だな〜」


「そうだね!」



普通なら味わえない異様な雰囲気が、何となく気持ち良かった。






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