one contract

one contract -mark 5- 葵目線




入学式から一ヶ月あまりが過ぎた頃。
スミレが此処、生徒会室を訪れる事も日課になっていた。
いつも他愛の無い話をしては笑ったり、スミレは時々怒ったりで。
こんな毎日を繰り返していた。
だけど、そんな毎日に飽きる事も無ければ、嫌いになる事も無かった。
逆に心地良い、好きだと思い始めていた。
無邪気に笑う、その顔を見ていたいと思った。

今まで何人もの女の子と付き合ってきた。
同じ様な他愛の無い話をしたり、手を握り合ったり。
他にもまぁ‥いろいろあったけど、

僕は相手に、直ぐ飽きたんだ。

だからコロコロ相手を変えたり、僕に興味がある相手と遊びで付き合ったり。
これは世に言う、プレイボーイってやつ?

でも、今回は違った。
僕がスミレに興味を持ったんだ。



‥‥って、これじゃあ僕、
スミレに惚れてるみたいじゃない。



なんて思いながら、生徒会室の窓から外を覗いた。
ここからは森の入り口と、その入り口の前にある広場が見えるだけ。
その広場には10人程人がいて、その中にスミレもいた。
そういえば、ダンス部に入部したって言ってたっけ。
スミレは好きだからね、ダンス。
僕の目には一生懸命ダンスを練習している、スミレだけが映った。
スミレは少しヴェーブの掛かった髪を揺らしながら、楽しそうに踊っていた。
‥‥でも、

「なんか、様子が変だな‥‥」

いつもより動きが鈍く、ダルそうに見える。
顔は笑顔だ。
でも、辛そう。
僕はなんとなく、生徒会室を出てその広場の方へ足を向けた。
嫌な予感がしたから。
何か知らないけど、スミレがやけに心配になったから。
階段を駆け下りて広場へ繋がる扉を開こうとした時、目に入った光景。



―――‥スミレが倒れた。



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