one contract

one contract -mark 1- 菫目線




明日は高校の入学式。
なのにボクは入学の準備も何もしないで、近所の公園で得意のブレイクダンスをしていた。
クルクルと体を動かすたびに回る空。
今日の空は透き通っていて、雲一つ無くてとても綺麗。
クルンッと体を回して地面を踏むと、拍手が聞こえてきた。


桃だ。


「相変わらず凄いね、菫のダンス」
「ありがとっ!」

自分にはそんな風にしろって言われても無理だよ。と桃は笑いながら言った。
これは、いつもの事で。

この子は、優木桃。

桃とは家が近所で、小さい頃から一緒に遊んだりしている。
ボクより一つ上のお姉ちゃんなんだけれど、あんまりそういう風には思えないや。

「菫、高校一緒だよね?」
「うんっ!いっしょ~♪」

そう、ボクは桃と同じ地元の高校に明日から通うんだ。
また桃と一緒に学校に通えるんだ!って思うと嬉しくなる。
でも‥桃とお出掛けとかしたいんだけど、最近はなかなか出来ない。



理由は‥‥―――――



「あ、紅ッ!!」

はぁ、やぁっぱりコイツと待ち合わせしてたんだ。

「おぅ、桃」

コイツは、赤原紅。

桃と付き合っているんだ。
最初聞いた時はホントにビックリした。
桃は真面目だからさ、まさかこんな髪がツンツンなガラの悪いヤツなんて‥
夢にも思わなかった。

でも桃はボクにだけこの事を、秘密だよ。って言って教えてくれた。
それは嬉しいんだけどさ、本当にこんなヤツとは思っても無かったから‥‥。

桃を泣かしたりなんてしたら、ゼェェェッタイにボクが許さないんだからね・・ッ!!ってこの前言ってやったら、泣かせたりなんかするか!!ってか、それはこっちのセリフだ!!って、少し喧嘩になった。
桃とこのバカが付き合い出してからというものの、ボクと桃が会う時間だとか、遊ぶ時間が本当に減った。
桃は、ゴメンね。って言っていたけど桃のせいじゃないもん。
‥‥このバカといる時の顔見たらさ、スッゴイ幸せそうだから。

だから、いいんだ。

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