one contract

きっと僕は今まで、お前を愛する事に臆病だったんだ。
だから自分の中にお前への気持ちを封じた。
でも、僕はお前を求めた。

誰よりも。
何よりも。

そして、お前も僕を求めた。
だから‥‥お前の望むままに。



一番近い存在にしてあげる。
なってあげる。

お前だけを僕の“餌”にしてあげる。
その代わりに‥‥、





僕だけの、“餌”になって。





「スミレ、僕と契約してくれますか?」
「ふぇ、ぅ‥、け、いや、く‥‥、します」

なんだか結婚式の愛の誓いのワンシーンみたいと笑ったスミレ。
やっと見れたよ、お前の笑った顔。
スミレの頬に残っている涙をそっと拭ってやると、くすぐったいと目を細める。

「契約したら、死ぬ時は一緒だね」
「だったら、寂しくないね」

ず――――っと一緒だから。

そう言うスミレの頬に、手を添える僕。
あ、何をしようとしているか分かったみたい。
スミレの頬は赤く染まり、水分を含んだ瞳は意を決した様にギュッと閉じられた。
ハッキリと感じられる様になる互いの呼吸に、ドクンッと心臓が高鳴る。

ヤバイ、僕とした事が‥‥、かなりドキドキしてる。

心臓の音が五月蝿い。
スミレに聞こえてんじゃないかって位に。
全校生徒を前にして、ステージに立って演説をする時よりも、

凄く、
すごく、
スゴク。



ドキドキする。



スミレには絶対に口が裂けても言えないけど、今まで何人もの女の子としてきた。
でも、こんなにドキドキするのは初めてだ。
そうだよね。
本気で愛してるって思えた相手だからな。
ほら、お前と触れるまで

―――――あと、1センチ‥‥。





ガチャ。
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