one contract

one contract -mark end-菫目線




あの後、アオちゃんと紅はお仕事が少しあったから、桃と話したんだ。
聞けば今日の出来事の時、アオちゃんは本当にボクを心配して、必死になって探してくれたんだって。
それを聞いたら、ボクはスッゴイ嬉しいのと同時に、顔が熱くなった。

今、絶対顔が赤い‥‥。

桃は視界にアオちゃんと紅を入れて、あんなに余裕の無い会長は初めて見たよ。と小さく笑った。
ボクも、桃を追う様に2人を目に写す。
さっきボクといた時とは違う、真面目な顔をして書類と睨めっこをしているアオちゃん。
紅は‥‥、書類を睨んで唸っていた。

「ねぇ、桃。桃はどうしてあのバカと契約したの?」
「んぇ!?‥‥な、なんでそんな事訊く の っ‥!?」

桃は真っ赤になって、ボクに視線を写した。
桃、今『の』だけ声が裏返ってたよ。

「ん~、この前、一緒に帰ったでしょ?その時にさ」



『自分も、そういう事があったから‥‥』



「って言っていたから、ちょっと気になったんだけど」
「‥そ、そう」
「うん、そう」

桃は注いでいた紅茶を一口飲んで、深呼吸。
そして、次は視線を紅だけに向けた。

「菫は、会長の事が好きだから契約したんだよね?」
「うん、好きじゃなかったら契約しないよ。桃はアイツと好き同士だから契約したんじゃないの?」
「‥‥。まぁ、ね」

桃は一瞬悲しい様な、切ない顔をした。
ボク、何かいけない事言っちゃった‥‥?

「いつか、ちゃんと話すね。菫」
「う、うん」

桃が切なげな顔をした理由は分からなかったけど、この後の桃が紅を見る目が優しくて、愛おしそうだったものだから、ボクは更に聞こうとした言葉を飲み込んだ。
それに言ってくれたもんね。

『いつか、ちゃんと話すね』

って。
だから、ボクはそれまで待つよ。
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