Lonely Choir
「マジごめん、美歌。ウチら何にもしてやれなくて…」
申し訳なさそうな苦笑いを浮かべながら、先輩たちは私に謝った。

「いえ…先輩方には感謝してます。部活楽しかったし」
私も苦笑いで答えた。

「今まで全然目立てなかったしね、ウチら。6人で合唱っつーのも厳しかったよね」
「あたしらもさ、去年入ってきた1年生が美歌1人だった時はヤバいって思ったけど…まさか今年の新入部員がゼロになるなんてね」
「先生だってウチらより吹奏楽部ばっかしかかりきりだしさぁ」
「しょうがないって、あっちは大会常勝なんだから」
「こっちはしゃべってばっかだったしねぇ」
…先輩たちはひとしきり愚痴をこぼしたあと、一斉に大きな溜め息をついた。

合唱部は、この夏の文化祭のステージをもって活動停止になった。
昔は50人を超える部員がいたこの部も、年々その数が減っていき…この夏、5人の3年生の引退により、残る部員が2年生の私1人になった。
落ち目の合唱部には、この春に新入部員を一人も得ることが出来なかったのだ。
そりゃそうだ。このモチベーションの低さ…
部活で青春を謳歌したいと希望に溢れる新入生は、みんな私たち合唱部をスルー。
初めは部員獲得の為にあれこれと頑張ってはいたものの、その効果は皆無。
夏の初めには募集をする気力も失せて…
そして、誰も聞いてなかったような10分間の文化祭のステージが終わったあと、先輩たちはどの部よりも早く引退して、大学受験モードへと完全移行した。
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