Lonely Choir
私の背中に、先生は言った。
意外な言葉に、私は驚いて振り向いた。

「後悔した、ってことはさ、未練があるってことだよな？」
先生は笑っていた。
「それってさ、歌いたいって、まだ思ってるんだよ」
自信に溢れたようにも見えるその表情が、何だか癪に障る…。
私の心の中を見透かしてるよう…。

「だとしても…私にどうしろって言うんですか」
「歌えばいいじゃないか」
「ははっ…もう合唱部無いの知ってますよね？合唱なんて一人じゃ出来ないじゃないですか」
イライラが渇いた笑いになって出てきた。
「合唱部が無くなったんだから、私はこれから勉強に専念するんですよ！」
先生に向かって口調が荒くなってくる。
何でこの先生にこんなに言われなきゃいけないの？
何か悔しい…。
こんなこと宣言してる自分が、物凄く悔しい。

「本当にそう思ってんのか？お前まだ２年だろ。周りだってみんな好きなことしてんのに」

グサグサと図星を突かれて、もう我慢が出来ない…！

「そうやって言うのは簡単ですよ！他人事だと思って…先生に私の何がわかるって言うんですか！」

私の声に、職員室の空気がぴたりと止まった。
気付くと、他の先生や生徒がこっちに注目してる…。

「わかってるよ」

この空気なんかお構い無しに先生は言った。
職員室にいる人たちは何となく私たちの方を気にしながらも、また慌ただしく動き始めた。

「やりたい気持ちがあるんなら止めるな。そういう気持ちがまだ少しでもあるんだったら、また俺ん所へ来い」
「は？どうして…」

何言ってんの、この先生…。
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