ハイスクールデイズ
1.運命の入学式
その日は高校の入学式だった。

大勢の生徒に押されるようにして急いで講堂に駆け込んだモモは、つま先に感じた奇妙な感触に瞬間的に動きを止めた。

モモに上履きのかかとを踏まれた男子生徒が前のめりになったのと、すぐ後ろにいた生徒がモモの背中にぶつかってきたのとは、ほとんど同時だったと思う。

「きゃあ!」という少女たちの悲鳴をどこか遠くで聞きながら、モモは目の前で派手に転んだ男子生徒を茫然と見下ろした。

「ご、ごめんなさい……」

はっとして謝罪の言葉を口にすると、すばやく身を起こした少年は、何も言わずに切れ長の目をすがめてみせた。

(こ……こわい)

野生の小動物が、猛獣に出会ったかのように、モモの身体が硬直する。
恐怖でペタリと膝をついた時、足元で何かがパリンと派手な音をたてた。



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