『花、愛でる人』

「思わせぶりだな……こんなものまで渡しといて」




頭を撫でた指は、左耳の上に付けていたペチュニアの髪飾りを弾いた。





「…………」



頷いて顔を上げたわたしの鼻先に、夏葵の指が触れて……ゆっくりと額へ上がっていく。




「……このままで良いのか?」



「えっ?」



「好きな奴が居る癖にこんなものを贈った来るような男、好きなままで居るのか?」



窺うような夏葵の眼差しを避け、瞳を伏せた。




諦めたくない……。
でも、蓮が受け入れてくれなかったことは事実だ。



わたしが百合奈さんに敵わないことも。



「夢梨にそんな顔させる奴が、この先おまえに幸せをくれるとは思えない」



「……なんで」




そんなこと言うの?



続けようとした言葉は喉が震えて上手く言葉にならなかった。
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