another contract

another contract -mark 4- 桃目線




『1週間待て』

そう言われて、今日で1週間。
人に血を与えなくなってから、時の流れはとても早く感じた。
紅さんは、本当に人の血は飲まないようだった。
飲むのはもちろん、

‥‥動物の血。



私は紅さんにこの1週間の間、何が出来たかな?
お世話係りとして紅さんに就けられたものの、いつも何かと助けられていた。
紅さんは、自室で食事を取っている。
旦那さんの事は、あまり好きではないみたい。
食器を片付けようと伸ばした手は、いつも止められた。

お前は休んでいろ。

そう言って。
掃除をしようとした時も、物を運ぶ時も。
いつも、俺がやる。と言ってさせてくれなかった。

それは何の為?



私が“餌”だから、早く体を回復させる為?
それとも、本当に本心からの気遣い?



「‥‥あの」

高校も同じ所と分かってから、一緒に登下校している。
“餌”だって、学校には通わせて貰えているのだ。
その帰り道、後ろから紅さんに声をぶつけた。

「なんだ?‥気分悪ぃのか?」

数歩後ろにいる私の正面に来た紅さんは、心配そうに私の顔色を伺った。

「い、いいえ、気分は全然大丈夫です」
「‥はぁ、お前なぁ‥」
「え?あっ、ゴメンなさい!!」

あぁ、何回目だろう。
敬語は止めてくれ。って言われてるのに‥‥。

「で、どうしたんだ?」
「あ、えっと‥‥」

もしあんな事を訊いたら、貴方はどんな顔をする‥?

「やっぱり、何でもない‥」

どっちでもいいか。
どっちにしろ気を使って貰っている事には変わりない。
心がどうとか、そんな事考えちゃいけない。

あと1週間したら、あんまり顔合わす事なんてなくなるだろうし。

「そういえば、あれから1週間経ったよな」
「え?」
「帰って直ぐ、親父の所に行くぞ」
「う、うん」

どうしたんだろう、急に。
急ぎ足で紅さんに付いて行く。
これは当たり前の事になっていた。
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