another contract

another contract -mark 10- 紅目線




「っ、お願い‥、飲んで‥ッ!紅‥ッ!!」

何かが、何か大きな衝動が‥‥

俺の中を浸透していく。

桃が俺の名前を呼んだだけなのに。
『さん』を付けて言わないだけなのに。
どんどん、体の、隅から隅までに、衝動は行き渡る。

いいのかよ、桃‥‥。
お前は“吸血鬼”に血を与える事なんかしたくないんだろ?
それを分かっていて、俺は“契約”したんだ。
俺は人の血を好んで飲まねぇ。
だから、ちょうどいいな。って思って“契約”したんだ。

俺の命なんて、お前にくれてやるって思ってよ‥‥。

でも、そっか‥‥。
俺が死んだら、お前は俺を追いかけんのか。
それは困るぜ、流石に‥‥。
なら‥‥

「悪ぃ‥‥桃」

俺は桃の首筋に歯を立てた。
これからどうするかは、後で考えればいい。
今は、桃を守らなきゃならねぇ。

久しぶりに生きているものから、直接血を貰った。

「っ、‥ぃ」

桃の苦痛の声が耳に刺さった。
ほら、やっぱり、イテェんだろ?

「こ、う‥」

俺の名前を呼ぶ声。
俺はお前言葉に、甘えても良いのだろうか。
本当に、桃の思い通りにしてもいいのだろうか。

俺、お前をおふくろの様にしてしまわねぇか?

さっきとは違って、重たく感じた体がものすごく軽く感じる。
分かる。

体に熱いモノが勢い良く流れて、俺を駆り立てた。
俺はゆらりと立ち上がる。

「お、お前‥ッ!!」

焦りだすその男達。
だよな?

俺は喧嘩が好きだから。
自分で言うのも難だが、もちろんその分強いって事。
今まで数え切れない程の喧嘩をしてきたんだ‥。
屋敷のヤツには結構恐れられているのが現状。
さっきまであんな情けねぇ姿だったのは、血が体から消え去ってたが原因だろ。
良かったぜ、身体が暴走する前に桃が来てくれて。
もし体が暴走していたら、人殺しになっていたかもしれねぇし。

桃にまであんな事したんだ。
ただで済ませるわけにはいかねぇぞ。

ドゴッと腹に蹴りを入れれば、簡単に倒れるその体。
葵を踏みつけているそいつにも、顔面に思いっ切り拳を飛ばした。

「ははっ、やっぱ先輩は凄いや」

ノーテンキに言う葵も、俺と同じ位にボロボロに。




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